インプラント治療症例ブログ6 (前編)
川崎区にある歯医者 パール歯科医院 院長の藤田です。私は日本口腔インプラント学会 認定インプラント専門医を取得しております。当院ではインプラント治療・矯正治療など自費治療に力を入れています。
今回は当院のインプラント症例を2回に分けて、お話をさせて頂きます。
目次
- はじめに
- 症例紹介
- 治療計画
- インプラント埋入手術とサイナスリフト・ラテラルウィンドテクニック詳細
1.はじめに
両側奥歯が咬めなくなってしまった患者様のインプラント治療についてお話しさせていただきたいと思います。こちらの患者様ですが、左下奥歯と右上奥歯が欠損しており、かみ合う力が前歯に集中し前歯の動揺やかみ合わせの位置(咬合高径)の低下も見られていました。
2.インプラントを用いて審美性の獲得と正しいかみ合わせの回復をはかった症例
A case in which implants were used to achieve aesthetic results and restore correct occlusion
症例の概要
患者 60歳 女性
全身疾患等 無し 非喫煙者
主訴
前歯を綺麗にしたい
左上3本連結した歯が揺れている
奥歯でしっかり咬めるようにしたい
肩がこりやすい
歯ぎしりがひどい
3.治療計画
初診時患者様に説明内容
1口腔内のレントゲン検査・歯周組織検査・口腔内写真等検査を行う
2歯周治療から始めて、奥歯にはインプラントを用いるこの際、右上奥歯の骨は危弱なのでラテラルウィンドテクニックを用いる
3左上動揺ブリッジは歯周組織の状態、咬合状態、患者様の希望等を鑑み慎重に治療方針を決めていく
3残存歯の咬合負担を軽減するため、前歯も含めて仮歯に置き換え正しいかみ合わせ位置に誘導する
4順次仮歯をセラミックに置き換える
5メインテナンス
1回目歯周検査

左上前歯3本連結のブリッジは歯周ポケット深めで動揺もみられます

奥歯でのかみ合わせがほぼないため、かみ合う力が前歯に集中しているようです。その結果前歯に動揺が出たり上下のかみ合わせの位置(咬合高径)の低下がみられます

初診時のパノラマエックス線写真です右上の臼歯が広範囲に欠損しています。長時間経過しているため上顎洞の拡大がみられます。上顎洞とは鼻の横にある副鼻腔の一つで、加齢や歯の欠損で拡大傾向を示すのです。上顎臼歯部にインプラントの埋め込み手術をする際、その難易度を大きく左右する要因です。
2回目歯周病検査

歯周病の初期治療を慎重に進めます。極端に進行しているわけではありませんが、4㎜以上の歯周ポケットがまだ残っていますし、ポケットからの出血しているところも数多くみられます。ブラッシング指導と歯石除去、生活習慣の指導等を行いました。
3回目歯周病検査

2回目歯周病検査の後、出血部位と深い歯周ポケット中心に歯肉縁下の歯石除去(SRP)を行いました。
その後3回目の歯周病検査となります。1回目と比べ深い歯周ポケットは、8ヶ所→4か所、出血部位は34ヶ所→20ヶ所に減少しました。左上前歯ブリッジのポケットからの出血、動揺はあまり好転しませんでした。含め審美的な観点と患者様の希望も考え抜歯インプラントという治療計画をたてました。
治療計画具体的な流れ
歯周病治療後
1左下奥歯2本インプラント
2右上奥歯3本インプラント ラテラルウィンドテクニックを用いたサイナスリフト応用
3左上前歯抜歯と同日に3本インプラント同日仮義歯装着
4奥歯インプラントと骨の結合を待って、仮歯装着し奥歯での咬合回復
5金属の詰め物・被せ物を順次仮歯に置き換え正しい咬み合わせの位置に戻す
6審美性と金属アレルギーを考え、順次仮歯をセラミックに置き換え


奥歯によるかみ合わせが、左右ともに喪失しています。この状況が長く続くとかみ合わせの位置(咬頭嵌合位)がどんどんずれていきます。顎の関節を中心とした本来のかみ合わせ(中心位)と咬頭嵌合位の一致というのは実際難しいのですが、当然そのずれは少ないに越したことはありません。ということで奥歯のインプラントからはじめました。


4.インプラント埋入手術とサイナスリフト・ラテラルウィンドテクニック詳細
左下奥歯にはインプラントを2本埋入します。その術前CTレントゲン写真、つまり輪切りにした写真です。埋め込む位置の骨の頬舌的狭窄がうかがえます。骨の上に丸く写った透過像は、金属球を埋め込んだマウスピースを装着して撮影したものです。理想のインプラント埋め込み位置を確認します。

埋入後のパノラマレントゲン写真です。インプラントとかみ合うべき、上顎奥歯は長期間にわたりかみ合いが喪失していたため、歯が下方に伸びています。右上上顎洞の拡大を確認するためCTレントゲン写真も撮影しました。




5.左下インプラント埋入手術詳細
右上臼歯部は4本のインプラントを埋め込みます。骨の状態は約2㎜程度で、薄いこと極まりない状態です。
サイナスリフト・ラテラルウィンドテクニック(下図)という術式を用いてインプラントを埋入することになりました。







サイナスリフト・ラテラルウィンドテクニックを併用した術式でインプラントを埋入しました。
使用したインプラントは、表面がハイドロキシアパタイトという骨との親和性がたいへん高い材料がコーティングされているタイプです。

インプラント埋入直後のパノラマエックス線写真です。骨が十分にある方向を狙って埋入しました。

今回は前編ということで、サイナスリフト・ラテラルウィンドテクニックを併用したインプラント埋入手術まで、お話させて頂きました。
次回はその後の実際に歯が出来上がり、食事などができるようにするためのところからお話させて頂きます。
パール歯科医院では、患者様が安心してインプラント治療を受けられるよう、安全性に重きを置いて治療を行っています。これまでに多数の症例を扱ってきた実績もございますので、治療方法や費用についてのご相談はお気軽にお問合せ下さい。
パール歯科医院 インプラント治療7つのこだわりについて
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パール歯科医院
日本口腔インプラント学会 認定インプラント専門医
院長 藤田陽一
インプラントに使用される素材の安全性
みなさま、こんにちは
川崎市「小島新田」駅から徒歩1分のパール歯科医院です。
当院は、歯を守りたい、健康を実現したいと願う方の歯科医院で、担当歯科医師・歯科衛生士があなたの健康をサポートいたします。
目次
- はじめに
- チタンとは
- チタンの生体適合性
- チタンの耐久性と腐食耐性
- アレルギーのリスク
- セラミックとは
- セラミックの生体適合性
- セラミックの耐久性と審美性
- セラミックの注意点
- チタンとセラミックの組み合わせによる安全性
- まとめ
1.はじめに
今回は、インプラント及びその上に立つ歯に使用されるチタンやセラミックの特徴や安全性についてご紹介します
インプラントは、失った歯を補うための治療方法の一つです。インプラントに使用される主な素材は2つで、人工歯根として使用されるチタンと、上部構造に使用されるセラミックとなります。

2.チタンとは
チタンは金属でありながら、腐食に対する耐性が非常に強いことから、多くの医療分野で使用されています。特にインプラントの人工歯根として、チタンはその優れた生体親和性から最も広く使用されています。
3.チタンの生体適合性
チタンの最大の特徴は、その生体適合性です。これは、チタンが生体と良く馴染むという特性を指します。さらにチタンは骨と結合する際に骨の成長を促進する性質を持っており、これを「オッセオインテグレーション」と呼びます。このプロセスによりインプラントが骨と一体化し、非常に安定した基盤を形成します。この優れた生体適合性により、チタンインプラントは他の素材に比べて人体に対して非常に安全であると考えられています。
4.チタンの耐久性と腐食耐性
チタンは非常に耐久性が高く、口腔内の過酷な環境でも劣化しにくい特性を持っています。口腔内は常に湿っており酸性度も変動するため、金属が腐食しやすい環境です。しかし、チタンは表面に酸化被膜を形成して酸化チタンとなることで腐食を防ぎ、長期間にわたってその性能を維持します。この特性は、整形外科医であるスウェーデンのブローネマルク博士が1952年に発見しました。
5.アレルギーのリスク
チタンは非常に生体適合性が高い金属であり、多くの人にとってアレルギーのリスクは低いとされています。しかし、極めて稀にチタンに対するアレルギー反応を示すケースも報告されています。必要に応じてチタンアレルギーのテストを行う必要があるのです。

6.セラミックとは
セラミックはインプラントの上部構造、つまり人工歯として使用される素材です。セラミックは天然歯のエナメル質に非常に近い色調と透明感を持っているため、審美的な観点から非常に優れています。また、セラミックは金属アレルギーのリスクがなく、生体適合性が高いことでも安全です。
7.セラミックの生体適合性
セラミックは非金属材料であり、人体に対して非常に良好な生体適合性を持っています。金属アレルギーを持つ方に対しても安全に使用できるため、インプラント上部構造として広く採用されています。さらに、セラミックは生体に対して刺激を与えることがなく、歯ぐきや周囲の組織との相性も良いです。
8.セラミックの耐久性と審美性
セラミックは硬くて耐久性が高い素材であり、咬合力に対しても十分な強度を持っています。また、セラミックは天然歯に非常に近い透明感と色調を再現できるため、見た目の美しさが重要視される前歯のインプラントにも適しています。さらに、セラミックは経年劣化が少なく変色しにくい特性を持っているため、長期にわたって美しい見た目を維持することができます。さらに近年セラミックをしのぐ耐久性を持ったジルコニアが一般的になっています。
9.セラミックの注意点
セラミックは非常に硬い素材である一方、衝撃に対しては脆いという特性もあり、日常的に歯ぎしりや食いしばりをしている方の場合、使用しているうちに割れてしまう可能性があります。最新のセラミック素材は改良が進んでおり以前よりも強度が向上していますが、必要に応じて就寝時マウスピースの装着などで対策を講じる必要があります。
10.チタンとセラミックの組み合わせによる安全性
このように、インプラント治療においてはチタン製の人工歯根とセラミック製の上部構造を組み合わせることで、非常に高い安全性と機能性が実現されます。チタンの強度と生体適合性、そしてセラミックの審美性と生体適合性が組み合わさることで、患者様にとって最も自然で快適な治療結果を提供します。
また、インプラント全体としての耐久性や口腔内での長期的な安全性が確保されるため、治療後も安心して使用することができます。チタンとセラミックさらにはジルコニアの組み合わせは、現代の歯科インプラント治療において、最高の選択肢の一つとされています。

11.まとめ
今回は、インプラントに使用されるチタンやセラミックの特徴や安全性についてご紹介しました。チタンとセラミックは、その生体適合性、耐久性、そして審美性において非常に優れた素材です。チタンは人工歯根として、セラミックは上部構造として、それぞれの特性を活かして安全で効果的な治療を叶えます。
当院では、安全性を特に重視したインプラント治療を行っております。インプラント治療の知識と経験が豊富な歯科医師、スタッフが治療を担当いたしますので、インプラントを検討されている方はお気軽にご相談ください。
医療法人アクアマリン パール歯科医院
院長 藤田陽一
インプラント症例ブログ その4
川崎区にある歯医者 パール歯科医院 院長の藤田です。
私は日本口腔インプラント学会 認定インプラント専門医を取得しております。当院ではインプラント治療・矯正治療など自費治療に力を入れています。
今回は、当院のインプラント症例について、お話をさせて頂きます。
目次
1.はじめに
2.症例紹介
3.口腔内の状況確認
4.治療計画
5.インプラント埋入手術
6.最終補綴(セラミック冠)の装着
7.まとめ
- はじめに
歯周病とかみ合わせの力の強さにより、歯が抜けてしまい物を噛めなくなってしまった患者様のインプラント治療についてお話させて頂きます。
2.症例紹介
咬合崩壊をおこした患者に対してインプラントを用いて咬合再構成をした症例
A case of occlusal reconstruction using an implant for a patient with occlusal collapse
年齢:58歳 男性
初診: 2016年6月8日
主訴 : 咬めるようにして欲しい 顎の左関節が痛い、音が出る
義歯は持っているが使いづらく感じる、ほぼ使っていない
歯科医院に来るのは約10年ぶり
矯正治療は希望しない
歯科恐怖症
メニエール病既往
補聴器使用
3.口腔内の状況

上記口腔内写真より
左右の奥歯でしっかり咬めない状況です。なおかつ以前、他歯科医院で治療したプラスチック歯が変色していますし、むし歯の進行もみられます。

上記レントゲン写真より
全顎にわたり歯を支える骨の吸収がみられます。歯周病が、咬み合わせ不備により加速度的に進行しています。歯根の先に膿の袋がみえる歯もあります
口腔内写真とレントゲン写真から以下問題点を考えてみました

以下さらに詳細な咬み合わせや歯の状態を調べました


下記、歯肉の精密検査です。予想通り歯周ポケットは深めで、出血してきた場所も多数あります。
緑の矢印はむし歯が発見された場所です。紫の矢印は歯根の治療が必要なところです。

4.治療計画
なるべく治療で歯を抜かないようにする予定ですが、抜歯の必要にせまられる歯がいくつかありました。
またかみ合わせと審美性の回復から、仮歯と仮義歯を治療途中で装着する事、患者様と相談しました。

以下は、全ての歯科治療の基本となる歯周病治療結果です。前回と比べ数値的にかなり良くなっています。

歯肉の状態が良くなってから右上と左下の歯を抜歯します。状況にもよりますが、歯肉の状態が良ければ、
その後の治癒も確実になります。

以下、上前歯の審美性と機能性の回復のため仮歯をいれました

その後左下奥歯2本、歯根の治療を行いました。歯根の先の膿の袋も術後6カ月で消失しました

仮歯をより審美性の高いものに置き換えて、咬み合わせの回復も目的とした仮義歯(局部床義歯)を装着しました。

以下、上記仮歯・仮義歯を用いた際のかみ合わせ(咬頭嵌合位)です。今回の症例では顎関節に症状がでているので、これの回復も目指していきます。仮義歯・仮歯はセラミックと違い耐久性はありませんが、歯の形態を簡単に変化させられるので、正しいかみ合わせを回復するのに必ず必要となります。

さらに模型を作製して咬合器というかみ合わせを精密に確認できる装置に取り付け診査します


咬合診査を歯科技工士とともに行い、理想の咬み合わせ理想の歯冠形態を模索して、以下ワックスで新しい歯の形態を作製してもらいます(診断用ワックスアップ)


診断用ワックスアップ作製時ポイントとなるのが、下顎を左右にずらした時、あたるのは犬歯のみ
また下顎を前方にずらした時、あたるのは前歯のみ(アンテリアガイダンス)というかみ合わせをつくる事です。


5.インプラント埋入手術
手術時は、インプラント埋入の位置決めをより正確にするためガイデッドサージェリーで行いました。

以下インプラント埋入後の全顎レントゲン写真と、その後インプラント上に仮歯を入れた状態でCTレントゲンを撮影、局所的に切り取ったレントゲン写真です
前後的にも左右的にも理想の位置に埋め込むことができました






顎関節の症状は時間の経過とともに回復していきました。
審美性を重視した2つ目の仮歯を経てセラミックの歯に置き換えました。
その後8年近く経過しましたが、定期的なメインテナンスのみで問題は起きていません。
6.最終補綴(セラミック冠)の装着
以下セラミックの歯が入った後のレントゲン写真です。

以下は、セラミックの歯を装着した後の口腔内写真です。
銀歯が数か所残っていますが、金属アレルギーを考えて近々セラミックに置き換える予定です。
顔貌写真も下顎のずれがなくなり自然になりました。


7.まとめ
歯の喪失の原因は,細菌と咬合力といわれている. この患者が一番最初に歯を喪失した原因も,歯根破折と考えられる.初診時歯周病の進行著しく動揺歯も複数あり,顎関節症状まででていた.まさに咬合崩壊の末期と考えられる状況である. 本症例のように遊離端欠損歯列になってしまうと,その補綴は部分床義歯かインプラントの選択肢に限られる. 部分床義歯の場合,咬合時の粘膜負担による沈み込みの他,就寝時の未装着状況等考慮すると,顎位のずれが生じやすくなってしまうと考えられる.
今回臼歯部の咬合回復が確実に可能なインプラントで補綴を行い,半調節性咬合器を用いて顎位の回復を探り,その後問題のない結果を得られた.しかしセファロ分析での骨格診断,さらには歯列矯正等も含めて考慮すれば,今回以上の良好な結果が得られたかもしれない.今後の課題としておきたい.
パール歯科医院では、患者様が安心してインプラント治療を受けられるよう、安全性に重きを置いて治療を行っています。これまでに多数の症例を扱ってきた実績もございますので、治療方法や費用についてのご相談はお気軽にお問合せ下さい。
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日本口腔インプラント学会 認定インプラント専門医
院長 藤田陽一
インプラント症例ブログ その3
川崎区にある歯医者 パール歯科医院 院長の藤田です。
私は日本口腔インプラント学会 認定インプラント専門医を取得しております。当院ではインプラント治療・矯正治療など自費治療に力を入れています。
今回は、当院のインプラント症例について、お話をさせて頂きます。
目次
1.はじめに
2.症例紹介
3.治療計画
4.インプラント埋入手術前の準備
5.インプラント治療の詳細
6.仮歯(プロビジョナルレストレーション)でのかみ合わせの確認
7.最終補綴(セラミック冠)の装着
8.かみ合わせの重要性
9.まとめ
- はじめに
今回は、インプラント治療でのかみ合わせの再構築についてお話させて頂きたいと思います。
2.症例紹介
歯の審美回復と顎関節症を治すために、かみ合わせの再構成を行った症例
(One case that I revived cuspid guided occlusion and made occlusal reconstruction)
患者:43歳 女性
主訴:以前他歯科医院でセラミック治療をしてから、かみ合わせが低くなってしまい顎の関節が痛くなり、音もし始めた。就寝時に歯ぎしりもするようになってしまった。
右下のブリッジも動揺してきて、奥歯でしっかり咬めなくなってしまった。
セラミックで奇麗な歯にしたい。

3.治療計画
かみ合わせには理想型というものがあります。
それは両側奥歯で咬み合わせて横にずらした時、ずらした側(作業側)は犬歯のみあたる。その反対側(平衡側)はあたらない。という咬合様式(犬歯誘導咬合)です。犬歯は他の歯と比べると歯の根が長くて大きい分横方向からの力に強いのです。また下顎を前方にずらした時、同じく当たるのは前歯のみ両側の奥歯は当たらないというのが、理想型です。その理由は後述します。顎関節の症状改善も含めるため、大部分の歯をやり直す治療計画をたて、失われた正しいかみ合わせを再建する方向で治療を開始しました。


ただ実際の口腔内では、歯列不正・咬耗(かみ合わせで歯が削れること)・歯周病の進行・不良補綴物・加齢などにより、理想のかみ合わせである犬歯誘導咬合は消失してしまう傾向が強いのである。本症例患者様は、審美的な希望も含めて大部分の歯の再補綴を希望している。これは犬歯誘導咬合を再構築する、またとない機会といえる。理想のかみ合わせを獲得することで残った歯の寿命が永らえることは言わずもがなである。

4.インプラント埋入手術前の準備
患者様かみ合わせの状態はというと
4本の犬歯がそれぞれ歯ぎしりで削れて背が低くなっている状態で、理想からは大分離れていました。不良なかみ合わせは就寝時の歯ぎしりや食いしばりを誘発します。その結果かみ合わせはますます悪くなり、それがさらなる歯ぎしりや食いしばりを誘発するのです。結果顎の関節にまで影響がおよんでしまうような、マイナスのスパイラルにはまり込んでいる状態といえました。下図のレントゲン写真では左下(向かって右下)にインプラントが2本入っていますが、これは前歯科医院でおこなったものです

5.インプラント治療の詳細
パール歯科医院では、現状ある歯とインプラントを長期間使用してもらうため、プラークコントロールの指導および、歯周病の治療を優先させます。初期治療の一段落後、一番気になされている右下ブリッジの支えになっている歯の精密なレントゲン写真(上図)を撮ると歯の根が割れていたことわかります。歯の周囲の骨も歯の根の炎症が原因で大きく欠損しているように診断できます。この歯は残念ですが抜歯となります。いつまでも残しておくと他の歯まで共倒れしてしまいます。抜歯後は一つ後方のもともと歯の無い所も含め2本インプラントを行う治療を予定しました

抜歯直後にCTレントゲン写真を撮影させてもらいました。抜歯した歯の顎骨の欠損が大きかったので、インプラントの埋め込み手術の前に顎の骨の再建手術を行う治療計画をお話ししました。(下図)



人工骨とコラーゲン製の膜を用いて骨の再建に成功しました。顎の横幅も足りなかったのですが、こちらも同時に回復することができました。(下図)

その後顎骨の治癒回復を待ってインプラントを予定通り2本埋め込み手術を行いました(下図)

術後のCTレントゲン写真です、横方向(頬舌方向)にも良い位置に埋め込みできました。(下図)


6.仮歯(プロビジョナルレストレーション)でのかみ合わせの確認
以前の歯科医院に通院開始時、上下前歯に隙間があったがあったとのこと、審美的に気になったので隙間をなくすように頼んだところ、奥歯を削って背を低くすることで前歯の隙間をなくしたとのこと。それ以降顎関節が徐々におかしくなったということである。奥歯特有の凹凸は削って平らになっている。(下図)


理想のかみ合わせである犬歯誘導とかみ合わせの高さ(咬合高径)を再建回復させるため、まずは奥歯から順に仮歯(プロビジョナルレストレーション)に置き換え、かみ合わせと顎関節の最適な位置を確認しました。

7.最終補綴(セラミック冠)の装着
仮歯で最適な位置関係が確認できた後順番にセラミックの歯に置き換えていきました(下図)
審美的にも十分患者様には満足していただきました。


8.かみ合わせの重要性について
犬歯誘導咬合とは、歯を咬み合わせた状態から横にずらして止めたときに、上下の奥歯には隙間が空いて犬歯だけが当たっている状態です。 犬歯誘導が行われない咬み合わせでは、奥歯に横方向からの力が強くかかってしまうことで、咬合性外傷と呼ばれる状態を引き起こします。咬合性外傷になると次のような様々な症状が出てきてしまいます。 1奥歯に亀裂が入ったり、割れたりする 2奥歯に知覚過敏や痛みが起こる 3奥歯の亀裂から細菌が入りむし歯になりやすくなる 4歯周病が進んで奥歯がグラついてくる 5顎関節症を引き起こす
このように犬歯誘導咬合ができない患者様は、奥歯の寿命が著しく短くなる傾向にあります。
セラミックの歯で犬歯誘導咬合を再建しました
右側は上下の犬歯の形態的な問題から犬歯・第一小臼歯の2本で支えることになりました



9.まとめ
今回に症例は、インプラント治療でのかみ合わせ回復を実施しました。
お口の中の状態にもよりますが、患者さん自身の本来のかみ合わせを実現するために、レントゲン写真やCTで患者さんのお口の骨の状態確認を行っております。また今回は、事前に人工骨とコラーゲン製の膜を用いて骨の再建を行い、スペース確保をすることで、より理想的な位置にインプラントを埋入することができた症例です。
パール歯科医院では、患者様が安心してインプラント治療を受けられるよう、安全性に重きを置いて治療を行っています。これまでに多数の症例を扱ってきた実績もございますので、治療方法や費用についてのご相談はお気軽にお問合せ下さい。
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院長 藤田陽一
インプラント症例ブログ その2
川崎区にある歯医者 パール歯科医院 院長の藤田です。
私は日本口腔インプラント学会 認定インプラント専門医を取得しております。当院ではインプラント治療・矯正治療など自費治療に力を入れています。
今回は、当院のインプラント症例について、お話をさせて頂きます。
目次
1.はじめに
2.症例紹介
3.治療計画
4.インプラント埋入手術前の準備
5.インプラント治療の詳細
6.最終補綴(セラミック冠&ゴールド冠)の装着
7.メンテナンスと経過観察
8.まとめ
1.はじめに
両側奥歯が咬めなくなってしまった患者様のインプラント治療についてお話しさせていただきたいと思います
こちらの患者様ですが、左下奥歯と前歯が欠損しています。右下奥歯はブリッジがはいっていますが歯周病の進行で大きな動揺がでてきています。以前他歯科医院でつくった部分入れ歯を使用していましたが、どうしてもなじめず使わなくなってしまったそうです。その結果右側ばかりを使うようになり今度は右側も問題がおきてしまいました。
2.症例紹介
下顎左右遊離端欠損部ならびに左下前歯部中間欠損部にインプラント補綴を行った一症例
患者:65歳 女性
初診: 2015年1月18日
主訴:奥歯で咬めないので,インプラントをいれてしっかり咬めるように
したい.
既往歴:特記事項なし
現病歴:下顎左側臼歯欠損部は,以前義歯作製するも使用感の悪さで
使用できなかった.下顎右側臼歯部ブリッジの動揺も気になり来院.
現症:なし
全身所見 :特記事項なし口腔内所見:特記事項なし
診断名 :32,36,37欠損
歯周病 STAGEⅢ GRADE C

3.治療計画
右側一番奥の大臼歯は歯周病で、顎の骨から分離している状態でした。その手前のブリッジの支えの小臼歯も銀歯の下でむし歯の進行が著しいため抜歯となりました。また左下銀歯の小臼歯は歯の根が割れていました。左右奥歯のかみ合わせに不均衡があり、しかも前歯もかみ合わせが悪いと加速度的に奥の歯にダメージが加わり次々と歯を喪失してしまいます。その典型的な症例です。
インプラント治療の前段階として、歯周病治療が行われます。歯周病検査の結果は割愛させていただきましたが、他にもかみ合わせの検査等、事前の準備はインプラントの長期的予後を考えるととても大事なものになってきます。

4.インプラント埋入手術前の準備
右下のブリッジ抜歯した後、顎骨の状態を精査するためCTレントゲン写真を撮影しました。撮ったCTに実際埋入するインプラントを重ね合わせてみました。CTを撮ると、通常のレントゲン写真ではわからない情報を数多く得る事ができ、より安全にインプラントの埋め込み手術ができるようになります。下顎の中には太い動脈や神経が走っています。ここをインプラント埋め込み手術時に傷つけてしまうと、後々の治りに時間がかかってしまうこともあるのです。同じくCTだと横方向の骨の厚みも一目瞭然になります。今回の場合前歯の骨の厚みが十分ではありません。
5.インプラント治療の詳細
今回はスプリットクレストという特殊な技法を併用した手術を行いました。
CTで得た情報をコンピューターで解析して、インプラントを埋め込む最適な位置・方向性・深さ等をコンピューター上で決定します。そのデータをもとに、インプラントドリルの入る穴をあけたサージカルテンプレートをコンピューター制御の機械で作製します。この技術はこの10年程度で飛躍的に向上しました。インプラント手術が、より安全正確に行われることが可能になったのです。


インプラントの埋め込み手術です。従来の方法と比べて半分程度の手術時間で可能になりました

インプラント埋入手術直後のレントゲン写真です。埋入位置・深さ・方向性とも理想的です
もちろん顎の骨の中にある動脈や神経を傷つけることはありません

同じくインプラント埋入手術後のCTレントゲンです。術前のシュミレーションと同じ位置に埋め込まれています。前歯部(左から4枚目)もスプリットコントロールが上手くいって理想の位置に埋められました。

その後のインプラントの頭出し(2次オペ)と型どりです

6.最終補綴(セラミック冠&ゴールド冠)の装着
埋め込んだ7本のインプラントの上にはセラミックの歯が載りました。また上の奥歯にはゴールドのクラウンが3本入りました。前歯のかみ合わせが切端咬合といって上下歯の先端であたっている難しいかみ合わせをしています。定期的なメインテナンスの度に全体的なかみ合わせを確認していく必要性があると考えています

7.メンテナンスと経過観察
現状咀嚼・審美について患者は満足している状態である今後長期的予後を観察していく必要があると考える
3カ月に一度のメインテナンスで術後管理を行っており,患者は欠かさず通院してくれている. その後インプラント周囲骨の異常所見,インプラント周囲組織の炎症所見は認めず良好に機能している.

9.まとめ
今回の症例では、65歳女性下顎左右遊離端欠損部ならびに左下前歯部中間欠損部にインプラント治療を実施しました。
インプラント埋入位置・深度については、解剖学的要素や骨造成・咬合関係などにより決定され,それは大変センシチブなものである、フリーハンドでは困難な症例でも,サージカルガイドを用いる事で簡単に短時間で埋入手術が可能であり,またそれにより不自然な上部構造形態も避けられるものと考えられる. それと同時にインプラントを用いることで,残存歯へ咬合負担の軽減をはかることができる。
バーティカルストップがほぼ得られず、前歯部反対咬合であれば残存歯へかかるパラファンクションは,数値化できるものではないが,いかほどであろうか. 口腔内を通じての患者へのクオリティーオブライフの向上に寄与できたものと考える
パール歯科医院では、患者様が安心してインプラント治療を受けられるよう、安全性に重きを置いて治療を行っています。これまでに多数の症例を扱ってきた実績もございますので、治療方法や費用についてのご相談はお気軽にお問合せ下さい。
パール歯科医院 インプラント治療7つのこだわりについて
https://www.pearl-dental-clinic.net/subject/implant2/
パール歯科医院 インプラント症例について
https://www.pearl-dental-clinic.net/case/
パール歯科医院
日本口腔インプラント学会 認定インプラント専門医
院長 藤田陽一
院長紹介 https://www.pearl-dental-clinic.net/dr/
インプラント周囲炎を予防するためのセルフケア
みなさま、こんにちは
川崎市「小島新田」駅から徒歩1分のパール歯科医院です。
当院は、歯を守りたい、健康を実現したいと願う方の歯科医院で、担当歯科医師・歯科衛生士があなたの健康をサポートいたします。
目次
1.はじめに
2.インプラント周囲炎を予防する必要性
3.ご自宅でできるプラークコントロール
4.まとめ
1.はじめに
今回は、インプラント周囲炎をご存知でしょうか?このインプラント周囲炎を予防するためのセルフケアについてご紹介します
インプラントは審美性、耐久性、機能性に優れておりメリットの多い治療方法ではありますが、一度治療をすればそれで一生もつとは限りません。長期使用のためにはご自宅でのセルフケアや歯科医院での定期的なメンテナンスが適切に行われる必要があります。
2.インプラント周囲炎を予防する必要性
インプラントの治療では、顎の骨に直接人工歯根を埋め込み、その上から人工の歯を被せます。部品はすべてチタン合金やセラミックなどの人工物でできているためむし歯になることはありませんが、歯周病のような症状が出る「インプラント周囲炎」になる可能性はあります。

インプラント周囲炎とは、歯やお口の中に残ったプラーク(歯垢)が主な原因となって生じる病気で、プラークの中に棲みついている細菌が歯ぐきや歯周組織に炎症を起こします。この炎症がインプラントを支えている顎の骨にまで及んでしまうと、インプラントがぐらぐらと動揺するようになり、最悪のケースではインプラントが脱落してしまうのです。
インプラント周囲炎は、歯周病と同様に初期段階では自覚症状に乏しく、ご自身で気づけないことも多くあります。症状が進行すると元の状態まで回復できないケースもあるため、できるだけインプラント周囲炎にならないよう予防することが大切です。そして、その予防のためにはご自宅での毎日のセルフケアが欠かせません。
3.ご自宅でできるインプラントのプラークコントロール
インプラント周囲のプラークをできるだけ確実に除去し、清潔に保つことがセルフケアの基本です。毎日丁寧に歯磨きを行うことがもちろん大切ですが、磨き残しが出ないように正しくセルフケアを行うことが必要となります。そのためには、歯ブラシで磨くだけではなく歯間ブラシやデンタルフロス、ワンタフトブラシなどの補助清掃用具を上手に活用しましょう。
【デンタルフロスの選び方・使い方】
デンタルフロスは適当な長さに切り取って指に巻き付けて使う「ロールタイプ」と、持ち手がついている「ホルダータイプ」があります。初めてデンタルフロスを使う方やあまり使い慣れていない方には、ホルダータイプがおすすめかもしれません。さらに、ホルダータイプには柄の形状によってF字型とY字型があります。奥歯のインプラントの場合はY字型が使いやすいでしょう。
歯と歯の間にフロスをあて、のこぎりのように前後に動かしながら歯間部に挿入します。このとき、インプラントの本体や歯ぐきを傷つけないように必ず鏡を見ながら行いましょう。フロスを歯面に沿わせるように上下に2~3往復して、プラークを絡めとります。反対側の歯面も同様に清掃したら、フロスを抜き取りましょう。インプラント周りだけでなく、他の歯すべても同様に清掃します。

【歯間ブラシの選び方・使い方】
歯間ブラシは、歯間部の根元に三角形の隙間がある方に適しています。隙間の大きさに合わせて適切なサイズの歯間ブラシを選ぶことが大切です。サイズが小さすぎると清掃効率が落ちてしまいますし、逆に大きすぎるサイズの歯間ブラシは貫通できません。1種類のサイズですべての歯間部を清掃できないこともあります。部位ごとに異なるサイズを使い分けるようにしましょう。適切なサイズ選びが分からない方は、歯科衛生士までお気軽にご相談ください。
50代以上の患者様は生理的にも、歯肉は退縮するのでデンタルフロスより歯間ブラシがオススメです。

歯間ブラシはブラシと持ち手がまっすぐになっている「ストレートタイプ」と、ブラシと持ち手に角度がついている「アングルタイプ」があります。奥歯の清掃にはアングルタイプがおすすめです。使い方はどちらのタイプでも同様で、ブラシをやや斜め下の角度から歯と歯の間の三角形の部分に通します。両側の歯面を意識しながらブラシを前後に動かし、プラークを絡めとりましょう。外側からと内側から、両側から行うとより効果的です。
歯間ブラシは使い捨てではなく何度か使えるものなので、使用後は流水下でよくこすり洗いをして風通しのよい場所で乾燥させながら保管します。毛がへたる、乱れるようになってきたら交換のサインです。しっかり洗っていたとしても細菌が繁殖しやすいため、10日に1回程度の頻度で交換するとよいでしょう。
4.まとめ
今回は、インプラント周囲炎を予防するためのセルフケアについてご紹介しました。せっかくいれたインプラントをなるべく長期間使用して頂きたいので毎日のセルフケアではデンタルフロスや歯間ブラシを効果的に活用し、インプラント周囲炎の予防に努めましょう。
当院では、安全性を特に重視したインプラント治療を行っております。インプラント治療の知識と経験が豊富な歯科医師、スタッフが治療を担当いたしますので、インプラントを検討されている方はお気軽にご相談ください。

パール歯科医院 インプラント治療7つのこだわりについて
パール歯科医院 インプラント症例について
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パール歯科医院
日本口腔インプラント学会 認定インプラント専門医
院長 藤田陽一
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